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【動画翻訳】ジゼル・ショウ、パワーを取り戻すための旅

 

プライドマンスということで、Impact Wrestlingで活躍中のトランス女性の選手ジゼル・ショウのドキュメンタリーを翻訳してみました。

Youtubeで無料公開中、20分ちょっとくらいのインタビュー中心動画なので、動画を開いて流しながら読んで頂ければと思います。


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ジゼル――

毎日毎日、今いる場所でなんとかその日を生きている。

他のみんなは、私がやれたことのない「その場その場じゃない生き方」を知っているのかな?

プロレスリングは、私がスタートラインに立つための切符だった。

 

ジゼル――

生まれはフィリピン。12~13歳ごろ、家族でカナダのノースウエスト準州イエローナイフに引っ越して、10代をそこで過ごした。

幼い頃は…子供時代は、簡単には行かなかった。

私はいつも、何かが違うと考えていた。ひとにはあなたはゲイかレズビアンだろうとか言われたけど、私にはなぜそう言われるのかわからなかった。ただずっと、自分が間違った体で生まれてきたということはわかっていた。

 

ジョイサ・マヨルド(ジゼルの姉妹)――

(子供時代に)何が起きていたのかは、私にも直感的にわかっていました。私が言えることは、彼女はその皮膚の中の居心地が悪いまま、歩んできたということ。

 

ジゼル――

嘘の人生を生きて行かなければならない。囚人のようだった。私は自由に振る舞えない。自分がしたいやり方で、自己表現することなんかできはしない。

 

ジニーヌ・マヨルド(ジゼルの姉妹)――

私は彼女が「その問題」に取り組んでいるのを見て来ました。でも私たちは子供の頃はフィリピンに住んでいて、その頃は物事がよくわかっているとは言えなかった。カナダに引っ越してから、彼女が本当に迷い、混乱しているのが私にも感じられたし、見て取れるようになりました。

 

ジゼル――

高校に入った頃、めちゃくちゃいじめられるようになった。本当に最悪。友達もいなくて、最悪だった。

 

ジョイサ――

彼女は何でもないようにふるまうのが上手かった。でも思い返すと、彼女の高校に頼れる人はいなかったし、親友と呼べるような近しい仲の友達もいませんでした。

 

ジゼル――

講堂に向かって歩いていると、連中は私を汚く罵り、食べ物を投げつけてきた。バスの中でも構ってほしくないのに絡まれて水をかけられたり……。

高3の時、フライトアテンダントの仕事を見つけた。その時の私はほとんど限界で、自分自身の抱えたものを放り出してでも、自分の人生を生きたいと願っていた。

 

ジニーヌ――

彼女が出て行ってしまって、私は打ちひしがれました。彼女がいつ戻ってくるのか、私たちが彼女のところへ行けるのかもわからなくて……。でも私はわかっていました。彼女が出て行ったのは、ここでは彼女の自己実現ができないからだってことは。

 

スコット・ダモア(ジゼルのレスリング指導者/Impact Wrestling副社長)――

僕がここでジゼルが子供の頃に味わってきたことについて、芯から理解しているようなことを言うことはできない。ただ言わなくてはならないのは、彼女の半生には多くの絶望があったということ……それから彼女は、人間の人生よりも大きな「プロレスリング」というものに出会い、心を奪われたということだ。

 

ジゼル――

間違いなくレスリングは、私を現実から逃がしてくれるものだった。全てのものに背を向け、私だけの時間をくれるもの。

 

ジニーヌ――

プロレスリングは、ずっと彼女の夢でした。彼女は子供の頃からずっと情熱的なファンでした。

 

ジョイサ――

私たち家族は子供の頃から一緒にプロレスリングを見てきて、それはひとつの家族の絆みたいなものでした。でもジゼルだけは観点が少し違っていて、彼女はプロレスリングをエンターテインメントとして楽しむだけではなく、レスラーの一人になりたいと願っていたのです。

 

ジゼル――

メディアの描き出すトランスジェンダーの人々は、シリアルキラーか心の病気かのようなものばかりだった。悪しきスポットライトしかあてられていないように見える。

ノックアウツ(Impact Wrestringの女子部門)を見た時、なんてカッコイイんだろうと思った。全員自信に満ちていて、セクシーで素敵。それがほんとに魅力的だった。

 

スコット・ダモア――

レスリングは、自分が自分らしくいられるという性質を持つ世界だ。ジゼルにとってのレスリングは二つ意味がある。一つは希望を与えるもの、もう一つは目標を与えるものだ。

 

ジゼル――

私は(プロレスリングを)学校に通ってトレーニングして身につけられるものだと知らずにいた。
フライトアテンダントになってから、私は友達とジムに通うようになった。その友達の相棒が、レスリングを見に行かないかと誘ってくれて、私はその時初めてインディー団体の興行を直接見て…更なる恋に落ちたの。私は彼らに、どうやったらレスラーになれるのか聞いた。そしたら評判のいい学校を探して、トレーニングを受けるんだって言われて…私はそうした。それが始まり。

 

ランス・ストーム(元レスラー/現プロデューサー兼コーチ)――

ジゼルをトレーニングしている時の一番大きな思い出は、最初の「プロモの日」のことだろうね。
身の内にある情熱を翻訳してエモーショナルな物語を語り、伝える――それがレスリングのプロモーションだ。
彼女のプロモは非常に力強く、何より彼女がそれを強く強く望んでいることが、彼女のことをよく知らない私にも伝わってきたんだ。

 

ジゼル――

プロレスリングの世界は、才能を求められる。

 

ミア・ヤム(元ノックアウツ王者)――

独立して考えれば、スポーツ。公平なスポーツだと思う。

ただビジネスとしては、キャラクターギミックを持たなければならない。

だからどうしても一定の人々は、「ミア、あなたは”韓国系の”"育ちの悪い"レスラーになる必要があるんだね」「ジゼル、あなたは"トランスジェンダーのレスラー"だね」という理解をする。
それはレスリングの歴史において「ステレオタイプ」なギミックが、大きな一部を担ってきたから。

 

ランス・ストーム――

「キャラクターになれ」とか「キャラクターを作れ」とか言うのは好きじゃない。それは自分自身を発見する必要のないものだからね。
一流のプロレスラーは、リングの中でこそ、自分が何をすべきなのか、何ができるのかを見い出すんだ。プロモーターが「こんな感じで行こう」と言ったら、それは君が「そう」だという訳じゃない。あくまで観客が「そういう感じ」で理解する糸口になるだけだ。

 

ジゼル――

これまでよく「フィリピン人のギミックはやらないの?」と訊かれた。それに対して、自分はもっとクリエイティブでありたいからステレオタイプのギミックは必要ないの、私はフィリピン人だけど、だからといってフィリピン人ならどう振る舞うものだ、というような定見は無いでしょうと答えると、「じゃあなんで"トランス的なやつ"をやってるの?」と言われる。

何なの? トランスはギミックじゃない。

 

ミア・ヤム――

ジゼルが業界に入るときは「OK、いいレスラーになりたいんだね。じゃあ何が君を際立たせるかだ。フィリピン人なの? じゃあそれを出したらいい。トランスなの? じゃあそれだ、目立つだろうね」でしょ。私にとっての「韓国系なんだ、じゃあ喋り方それっぽくしたらいいんじゃない?」みたいなやつね。ただのステレオタイプだけど、10人の良いレスラーがいたら、その中で"際立つ"ために、リングでそれをやらせようとする訳。不満しかないわ。

 

ジゼル――

「性別」で評価されるより、リング内での能力で評価された方が良いに決まってる。

 

スコット・ダモア――

ジゼルはリングの中に大きな野心を持っている。それは素晴らしいものだ。キャラクター作りは非常に自然な、私生活のキャラクターを拡大したもので、ファッションもメイクもコスチュームもシューズも、全部自分で考えている。

 

ジゼル――

多彩であることがカナダの魅力で、そこでトレーニングを積めたことは素晴らしいことだったけど、カナダはあまりに広すぎて、それに対してレスリング興行は多くない。
だから私はイギリスに渡らなくてはいけなかったの。コンパクトで、レスリング興行がたくさんあるから。興行に足を運ぶ熱心なレスリングファンも多い。
家族や友人から離れて、生活を再出発させなくていけなかった。でも新生活には慣れられたし、何より私を成功に導いてくれた。
プランがあったから、毎週末ごとにプロモーターにメッセージを送った。木金土日と働いて、やり遂げるか壊れるかって感じ。

 

スコット・ダモア――

ジゼルの核心に居るものはアスリートで、リング内でもリングサイドでも、すべてにおいて的確だ。

 

ジゼル――

イギリスで誰もが為し得なかったことをやり遂げたかったの。

 

ミア・ヤム――

他人と比較して目標を決める時、自分自身に賭けられれば花開く。

 

ジゼル――

その時点で私はイギリスの二つの大手団体でベルトを獲ったけど、特に誇るべきものではないように思えてしまった。団体がよそ者にタイトルを獲らせたのは初めてのことだったとしても。その気持ちが私を打ちのめし、自分自身の為すべきことと、「次」を考えさせたの。

 

ミア・ヤム――

ひとつの目標を達成すると、その先にあるものが見えて来る。みんながお前にはできない、成し遂げられないと言っていたもの、もっと大きくてもっと良いものが見え、頂点を狙う気概が生まれる。

 

ジゼル――

プロレスリングは私がスタートラインに立つためのチケットだった。
でも私の人生はそもそも、いつも移動し続けて、そのたびスタートラインに戻って別のことを新しく始める繰り返しでもあった。要は悪循環――ああ、人に知られてしまった、もう荷物をまとめて去る潮時ってことね、了解……って。

 

ミア・ヤム――

興行に出るたび彼女が沈黙の中で耐え、精神的な戦いを強いられ、そしてそれを憂い続けなくてはならなかったということが分かった時は、本当に酷いと思った。

 

ジゼル――

毎日毎日、今いる場所でなんとかその日を生きている。
みんなわかってるのかな?
みんながトランスジェンダーについて議論する時、体の話にばかりフォーカスされる。
けれどまず現実の問題として議論すべきなのは、トランスジェンダーには平等な機会が与えられていないこと、虐待の犠牲者になっていること、そして何より暴力の標的とされていることではないの?

 

ジゼル――

いつも想像してしまう。誰かがやってきて、私に今日死なないのか、と訊くんじゃないかと。

 

スコット・ダモア――

巨大な乗り越えられない壁があったとして、そのさらに向こうにあるのは「日常」だ。巨大な壁のこと自体を認識することはできるが、日常それ自体を捉えることはできない。

 

ジゼル――

――そういうことを、いつも頭の奥で考えている。言ってしまえば、そういうことが私の中で否定的な思考停止を起こして、「今その瞬間に生きる」ということをできなくさせているの。

 

ミア・ヤム――

彼女が秘密を打ち明けてくれて、ありのままの彼女の身体性を理解することができた。彼女とは色んなことを議論したけど、このことは必要以上に彼女の重荷になっていると思う。彼女はイカしたレスラーで、めちゃくちゃ素晴らしい人間。それが全てでしょ。

 

ジゼル――

心の中の声は消えない。
ただ私は、自分のことを伝えることで、この不安から解放されたかった。そしたら、自由になれるんじゃないかって。

 

スコット・ダモア――

彼女が話してくれた不安の一部は、レストランでもカフェでも公園でも、座ることができないという話だった。誰がいるのか、誰が自分を見ているのか、誰が自分のことを考えているのか、絶えず警戒し続けなくてはならないと。

そんなの……そんなの最悪だ。

つまり僕の理解では、彼女は他人の目を気にせずに振る舞うことも、リラックスさえできないということだ。

 

(インターネット記事の画像)

見出し:プロレスラーのジゼル・ショウがトランスジェンダーであることをカムアウト「私のパワーを取り戻す」

 

ハイライト:「カムアウトに最適な時期なんか無い」とマヨルドは語った。

 

ミア・ヤム――

彼女がトロントのプライドパレードについて尋ねてきた時のことを思い出すに、彼女はナーバスになってた。その期間である週末に、一体どんな記事が上がってくるものかと。
私は彼女が不安に囚われすぎないよう、現実的な目や耳になって助けようと思った。アンタには助けが必要だ、って。

 

スコット・ダモア――

彼女の物語、真実を記事として世に出す過程で、僕が何度も何度も繰り返し言わなければいけなかった言葉がある。「軽すぎる」だ。
これらのことは全て、彼女が自分自身として快適でいられるようにするためのものだ。他のことは関係ない。

 

ジゼル――

今までプライドイベントに行ったことは無かったし、始まる前は確かにナーバスになってた。でもイベントのワクワク感で記事が出ることも楽しみになったし、記事によってこうして話を共有することもできた。

 

プライド・トロント(2022年6月22日)

司会「彼女はレスリングの世界にいるトランス女性としてカムアウトしただけじゃありません。今ここに、私たちの一人として来てくれました。本日のゲスト、ジゼル・ショウ!」

ジゼル「初めてこうしてたくさんの人たちの前でスピーチをする機会に恵まれたことを誇りに思います。私はプロレスラーです。これまでいつもトランス女性だと声に出すことを恐れ、そのことで自分を責め、ストレスに思うことで不安を増大させていました。
けれど今日の朝、すべてが変わったのです」

ジゼル「隠れるのはもう終わり。真のジゼル・ショウになります。私はディーバ、強くて自信に溢れ、賢明で、そして「本物(オーソリティ)」」

ジゼル「私は今、パワーを取り戻しました。これからみんなにパワーを与えていきます!」

 

スコット・ダモア――

このことは重荷となり、不安やストレス、鬱や様々な身体的症状を引き起こしたと思う。けれど、彼女はそれらから手を放すことができた。人々が彼女に望むことをしようとするのではなく、ただ彼女自身として、あるがままに居ることで。

トロント・プライドに参加するにあたって、彼女が引きずり、背負っていた重荷を減らすことができたことを望むし、少なくとも僕が見るに、彼女は重荷や軛を粉々に粉砕し、二度と背負わなくて済むようにしたと思う。

 

ジェニファー・ルメイ(元レスラー)――

完璧で、美しくて、私は彼女のその姿を見るだけで幸せな気持ちになった。
楽しんでいたし、自由に話せていて……何より、そこに恐れは無かった。

 

スコット・ダモア――

今回のことが彼女に与えた影響を見て行きたい。彼女があらゆる物事に際して望んできたことであり、彼女を思い遣る全ての人が望んだことだったから……彼女が真に自分自身を愛せるようになるということは。

 

ジョイサ――

プライドへの初参加は、彼女が言葉を行動に移す方法を得る機会になりました。

 

ジョイサ――

私たちは彼女のために、いつでもここにいます。
でも、彼女にはもっと多くのサポートを得て、もう独りじゃないと安心できるようになって欲しい。

 

ジゼル――

今の気持ちは、「パワーを取り戻した」という感じ。トランスという言葉を受容することで、快適さと活力を取り戻せた。

私は言葉で傷つきたくなかった。思えばそれはずっと私の足枷になっていたと思う。いつもビクビクしていたの、他人が私に「やあ、君って男の子かい?」「君ってトランスかい?」と訊いてくるんじゃないかって。

でも今は違う。

「だから何?」って感じ。

 

スコット・ダモア――

今大切なことは、彼女はジゼル・ショウで、ノックアウツの一員であるということ。それはつまり、彼女が成功するのもしないのも、彼女のリングパフォーマンス次第ということなんだ。

 

ジゼル――

この仕事で成功するも失敗するも自分次第。自分がどれだけレスリングに打ち込み、努力できたかということだけ。人種や性別の問題じゃない。

 

ミア・ヤム――

ジゼルはずっと私たちの一員だった――ノックアウト部門は高レベルの女子プロレスラーばかりで、ジゼルはそこにピッタリの存在。トランスであることは関係ないし、アジア人だとかそんなのも関係ない。私にとって、彼女は最高にイカした女たちの一員で、リング上ではパートナー。

 

ジゼル――

自分がノックアウツと呼ばれ、ノックアウト部門の一員だってことは興奮するし、何より誇りに思う。次世代の灯火を託されているということだもの。

女性がバリアを破壊し、歴史を作りあげるところを見るのは、ものすごくエンパワメントされる。まして私がその仲間で、シスターフッドの中にいると心底思えるのは本当に素晴らしいこと。私は私の家族を持つことができたし、家族に癒されてもいる。途方もないことね。

 

ミア・ヤム――

(Impactの)ロッカールームの良いところは、誰も別の誰かを偏見の目で見たり判断したりしないこと。大切なのはここ(頭)とここ(心)。

 

スコット・ダモア――

団体が多様性とリプリゼンテーションを持つということは、どこかに座っている次のジゼル・ショウに「君を待ってる、ここに道がある」と示すということなんだ。

 

ランス・ストーム――

これは子供たちにとって非常に大切なことだ。自分自身について感じていることが間違っているのではないかと疑うことは、恐ろしい。自分のような人間が見当たらないのは、自分が間違っているからなのかと。
けれど彼女のリプリゼンテーションによって、ひとりでも子供が救われたなら、千人の子供たちが安心し、「自分は一人じゃない」と思えることにつながる。

 

スコット・ダモア――

どこかにいる、まだ小さな存在がジゼル・ショウを見て「私もこの人みたいになれる」と知る、その瞬間が来るんだ。

 

ジゼル――

私がこの仕事で成功するということが重要なのは、自分のように働ける人間がまだ多くはないから。
私は今、注目を集めることに集中している。もっと私のような立場に置かれている人々が、私の足跡を辿って来られるように。

 

ランス・ストーム――

レスリングは自分がなりたいと思う自分になることができるし、そのことでより能力を発揮することができる。本当の自分を表現し、観客に受け容れられることで、快適さと自信を手に入れ、さらに多くのことをできるようになるんだ。

 

ジゼル――

今、私はただ自分自身でいるだけと感じている。それはつまり、私の時間、私の人生を手に入れたということ。とても幸せ。

 

ミア・ヤム――

レスリングはジゼルに、彼女の味方をし、サポートし続け、彼女が必要な時には手助けをする人々がいるということを気付かせた。100%自分自身でいることができる、心配することは何もないって。

 

スコット・ダモア――

彼女はトランスジェンダー? ――そうだ。

彼女はフィリピン人? ――そうだ。

彼女は痛みを抱えている? ――勿論そうだ。

けど今、これらのことは彼女が誰であるかという側面の一部に過ぎない。これらの要素だけで彼女を外側から定義することは、誰にもできはしないんだ。

 

ジゼル――

プロレスリングは間違いなく、私という個人を救った。私のエネルギーのはけ口となってくれたから。プロレスリングを愛している。

自分の夢や目標を、本気で追いかけてはいない人もいる。でも夢を追っている多くの人は、人生に一度の最高の瞬間を狙っているもの。1000%の力を振り絞ったら、その夢や目標はさらに望ましく愛しいものになる。

 

ジョイサ――

自分の愛するもののために立ち上がり続け、戦い続けることができれば、いつかトンネルの出口を見ることができる。
彼女は勇敢で強く、自信を持った自分になれた。今最高の環境にいるのは、人生のどんな逆境にも負けなかったから。どんな時でも正しい心を持ち続けたから。

 

ミア・ヤム――

レスリング業界がどこに向かうかは誰にもわからない。この出来事は6カ月前では起こらず、今でなくてはならなかった。ジゼルのカミングアウトは、レスリング業界全体の軌道を少し変えたと思う。

 

ランス・ストーム――

誰かが葛藤と戦わなければならなかったことを知らない人々は、こうしたことがどれだけの慰めになるかわからないと思う。

自分がこの世界で独りではないと知ること。

とりわけ――レスリングファンならこんな感じかな、「彼女がいるから成功できた、歓迎されるようになったんだ」と思ってもらえること。

それは本当に素晴らしいことだ。

 

ミア・ヤム――

レスリング業界は、ジゼルと共に変わって行くし、その変化を必要としている。ジゼルには感謝しないと。

 

ジゼル――

公私共に「始まった」という感じがする。経験したことのない、人生の新しい側面が。
人生が変わって、私はひとつ成し遂げた。でも今は新しい創造が始まっている。

現実に向かい合い、それがどこに向かうかを見届ける。

 

 

 

 

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Youtubeの字幕機能を参考に訳したので、文字が出なかったところはヒアリングというか推測みたいな感じです。意訳的なところもあるので「大体あってる」くらいの着地点だとは思うのですが、大幅に間違っているところに気づいた方がおられましたら教えてください。

プライドマンス中になんとか訳し終えることができました~!

翻訳ラストスパートの最中にさらに良いニュースが入って来ました。
Impact Wrestlingは来月7/16にカナダのオンタリオ州ウィンザーで、ウィンザーエセックスプライドナイトの開催を決定。
これはプロレス団体が主催する初のプライドイベントになるようです。
興行後はジゼルとチームメイトでもあるジャイ・ヴィダルのミート&グリートが企画されており、チケット売り上げの一部は98年の創設以来、LGBT+の若者の自殺防止のために活動を続けて来たトレバー・プロジェクトに寄付されるそうです。

impactwrestling.com

 

トランス女性の選手がいるのはImpactだけではないですし、AEWなどもチャリティーTシャツの販売をしてきましたが、プライドナイトの興行合同開催決定というのは本当に歴史的な出来事だと思います。

途中でミア・ヤムが言っていたように、プロレスは歴史的に、ステレオタイプと偏見を煽るキャラクターギミックに表されるように、セクシズム、ナショナリズムエスノセントリズムといった差別的意識に依拠したエンターテインメントでもあり続けて来たという事実があります。これはアメリカでも日本でもメキシコでもイギリスでもどこでもそうです。
Impact(旧TNA)は2002年の創立以来、良い意味でも悪い意味でもカオスな団体ではあり続けてきましたが、基本的にはWWEへのアンチテーゼであることを常に意識し続けて来た団体だと思います(まあホーガンとネイチを押さえてた2010年代初期以外は)。

WWEがワールド・レスリング・エンターテインメントの名前を捨てた時は「我々が"レスリング"だ」と名乗っていましたし、何よりジゼルが憧れていたノックアウツは、WWEがずっと「ディーバ」路線をやっていた時に、ゲイル・キム対オーサム・コングを(通常放送の、とはいえ)メインイベントにしたりしてましたからね。

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セクシー路線のタッグチーム「ビューティフル・ピープル」(入場シーンが常に最高視聴率)からこうしたバチバチの試合までやっていたのがノックアウツの魅力で、私の中途半端な観測ではECWで活躍していたジャクリーン(ジャッキー)が来た2006年あたりから空気が変わったようになんとなく思っているのですが、いわゆるディーバ体型ではないODBもすごく人気あったし、WWEの女子部門とは違うテイストにしようとした結果、個性と個性が凌ぎを削る実力主義的な世界を創り出していたように思います。

ただ別に当時のトップに思想があってやってたのかというと、まあまあ現場主導で転がって行った結果という感じでしたし、ほんとずっと経営が安定せずフラフラしていたので、今のスコット副社長体制になってからは改革やひとつひとつの方向性に明確な意志が感じられるのでそこはほんと良かったな……と思っています。
ランス・ストームからもそういう雰囲気を受けるのですが、プロフェッショナリズムをきちんと持っている人は、偏見を排して物事を見られるんだなあという感じがしますね。

この先、プロレス業界全体が変わるかどうかというのは、それはもうひとえにファンの意識が変わるかどうかに尽きていると思います。
エンターテインメントを動かすのは、トップの意志も必要ですが、一番はそれを支えるファンのパワーあればこそです。

毎日命を懸けて戦う選手たちがより称えられ、尊敬される世界を望むのであれば、どうかこの変化を応援してみては頂けませんでしょうか。

より多くの人が希望を持てる世界になるように。