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…もまた覗く

2016.10.26 CAPTURE INTERNATIONAL 北原光騎vs小橋建太スペシャルトークショー(MC小佐野景浩)メモ書き

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CAPTURE INTERNATIONAL地下室マッチ、今回も面白かったです。

ざざーっとですが、トークショーの聞き書きをまとめました。

 

87年3月菊地、5月北原、6月小橋入団
北原さんは最初に会ったのは世田谷区砧の全日合宿所だといい、小橋さんはジャパンプロレスで会ったという
いくつか記憶の食い違いがある模様

北原さんの小橋評
3つ年下だが生意気で、ただとにかくよく練習をする真面目な青年
工藤静香をかけながら練習していたよね」

小川さんが寮から出て行くことになり、菊地さんが寮長になった
菊地さんは一人部屋で、北原小橋は奥のきったない広い部屋に相部屋
ラジャライオンは壁に穴を開けるからなどという理由で入寮しなかった
ジョン・テンタが上の階にいて、チャンコができると小川さんが菊地さんに「テンタさん呼んでこい」と言うので、菊地さんが「テンタサーンチャンコデキマシタヨ」とカタコト風のただの日本語で伝えていた

当時の入門生は皆バックボーンを持っていたので、小橋さんは1度書類で落とされている
小佐野さんは入門したての小橋さんを田上さんと間違えて取材したことがある
話しているうちになにか食い違うなと思ったけど取材を途中でやめるわけにもいかないので…
北原「普通自分は田上じゃないって言うだろ」
小橋「聞かれなかったし…」
小佐野「相撲の玉麒麟が来るという情報があったので、この体格はきっとそうだろう、髷を落としたから顔の雰囲気が違うんだろうと思ってしまって…」
小橋さんはプロはやっぱりすごいなただの新人なのに取材があるんだと感動していた
その時撮った写真をあとで欲しいと言ったらくれなかった
小橋「田上明じゃないってわかったから捨てたんだ」
小佐野「どこに行ったかわからなくなっちゃったの!」

天龍さんが辞めて北原さんもついて行って、バラバラになった後は連絡を取らなかった
北原「だって迷惑かけたもの。(申し訳なくて)取れないよ」
小佐野「武道館で『これからの全日本を背負って立つ三人』って紹介されてすぐ辞めちゃったもんね」

公式で試合はしていないけれど、練習試合の様子がYoutubeにある
多分北原さんが一年のカナダ修行から帰ってきたあとくらいの頃
そのあとすぐ辞めてしまった
「北ちゃん、天龍さん辞めるって!」って言われて「俺も辞めるんだよ」って

それからは数えるほどしか会っていない
北原さんがコンビニでカップラーメンにお湯を入れて持ち帰って歩いていたら、ベンツがすーっと寄ってきて「北ちゃーん!」って声をかけられた
小佐野「記憶食い違ってないですか?」
小橋「はい。ありました」
あとは冬木さんが亡くなる前あたりとか
小橋引退試合の時にちょっとだけとか

当時の寮生は仲良しだったし、既に寮生ではなくなっていた三沢さんたちもよく道場に来て練習していたからみんな仲が良かった
前回のトークショーで菊地さんと北原さんでいたずらをして新人を辞めさせてしまった話があったが主犯は菊地さんだった
折原さんをオイル塗りたくって小橋さんの部屋に行かせるといういたずら(?)をしたところ、小橋さんが激怒して「なんだおまえ!!!」と怒鳴りつけ折原さんが泣いてしまった
北原「普通面白がるだろ…」
小橋「いや、怒るよ!!」
(このあたりで残り時間1分のコール)
小佐野「待ってください歴史的な再会なのにこんな話で」
小橋「せっかく会ったのに折原の話で終るの???」

北原「トークショー断られると思っていた」
小橋「断ったほうがよかったの??」

北原「病気はもういいの?」
小橋「もう大丈夫!!!」

子供の話
北原さんのところの娘はもう中学生
天龍さんが「レスラーは焼肉ばっかり食ってるから娘ばっかり生まれる」って言ってた
小橋「天龍さんの説でしょ!?」
でも周囲のレスラーの子供は何故かみんな娘

北原「俺は(小橋を)弟のように思っているから」
小橋「目が笑ってるよ。ほんと口が上手いんだから」

今日出場する野村くん(と青柳くん)が北原さんのところへ練習に来ている話
小橋「準から聞いてるよ」
北原「(来るということになって)良く思わない人もいるかもしれないから適当に来いよって言ったら2日にいっぺんのペースで来るんだよ」
小橋「いいことじゃん」
北原「良くない、あいつらどんだけ食うと思ってるんだよ!」

野村くんは昔の小橋さんに体型がよく似ている
真面目な性格も似ている
北原「だから(教育は)俺に全部任せてくださいって秋山社長に」
小橋「全部はよくない。野村くんがこんな風に口がうまくなるのよくない」

引退撤回したレスラーはいっぱいいるから小橋さんも撤回するのではないかという北原さん
小橋「いや、俺は撤回しないよ」
北原「撤回するよ。(奥田アナに)両国で試合するからな! 『準、おれやるよ!』って言うんだ、わかってる」
小橋「ほんと口がよくまわるよね…」

 

 

30分という短いトークショーでしたが、当時の仲の良さが伝わるようないい雰囲気でした。

ご参考までー

スーパー・ササダンゴ・マシンTwitter炎上の記録と検証

半月前になりますが、夏休み最終日の8月31日、DDTプロレスリング公式サイトに以下のような「お詫びとお知らせ」が掲載されました。

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ササダンゴ・マシンのツイートに関するお詫びとお知らせ | DDTプロレスリング公式サイト

この度、スーパー・ササダンゴ・マシン選手がTwitterで、DDTの信用を著しく貶めるような誤解を招くツイートをおこないました。

また、弊社代表取締役社長・高木三四郎は当該ツイートを不用意に拡散し、それがDDTの総意であるかのような誤解を皆様に与えてしまいました。

株式会社DDTプロレスリングとしてはこの件を受けて、ササダンゴ・マシン選手の9月分参戦大会のギャランティーを50%カット、高木三四郎の9月分報酬を20%カット致します。
ファンの皆様には今回の件でお騒がせしたことを深くお詫び申し上げます。

(※太字は筆者)

誤解という単語が2回登場し、重ねて強調されているのが気になったので、太字にさせて頂きました。

ギャランティーカットという処分に、起きた事件の重大さを感じる「お知らせ」ではありますが、この文章だけでは、スーパー・ササダンゴ・マシン選手がTwitterで何か良くないことを書いてしまい、それを拡散した高木三四郎社長共々処分を受けたということだけしかわかりません。

例えば1年後に新しくファンになった方が遡ってこの「お知らせ」を読んでも、何が起きたのかは理解できないでしょう。

このエントリの目的は二つあります。

スーパー・ササダンゴ・マシン選手が書いてしまった「誤解を招くツイート」とは一体なんだったのかということを、今後の再発防止のために記録すること。

そして、この件に関して「何がいけなかったのか」ということを、これまた再発防止のために検証することです。

 

では経緯から振り返ってみましょう。

経緯

・8月30日 12時08分

スーパー・ササダンゴ・マシン選手がTwitter上で以下の2ツイートを発信。

プロレス界で言えば、世間ではプ女子(=プロレス好き女子)だなんだと注目されていますが、それは私が届かせたい相手ではありません。
そもそも、広告代理店やテレビ局が作った幻想ですよ。一人当たりの消費量、支出額で僕を支えてくれるのは30代、40代の男性。
黄色い声援は硬貨、男性の声援は紙幣。

これは実感ですが、実際にそういうデータ取りをちゃんとやっていて、その人たちが喜んでくれそうなこととして始めたのが煽りパワポなんです。
これを気に入って30代、40代の方が会場に来てくれて、その人たちは今は会社では中間層ですけど、出世すれば、チケットをまとめて買ってくれるようになる。そういうビジョンも大切なんです。

当該ツイートは既に削除済みのため、以下はご提供頂いたスクリーンショットです。

f:id:nerilow:20160917013839p:plain

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この2つのツイートからまもなく、彼が主戦場としているDDTプロレスリング高木三四郎社長がリツイートしたことで、プロレスファンを中心に拡散。主に女性ファンからの困惑や怒りが反応として現われます。

 

・ 8月30日 12時17分

 今まで彼をフォローしていたにも関わらず、わずか10分足らずでフォローを切るほどの怒りを見せるファンも現れ、問題が表面化。

 

 ・8月30日 15時07分

当該ツイートがかなりの速度で拡散し始め、怒りと困惑を招いている様子を感じてか、男色ディーノ選手がフォローに入ります。

 

・8月30日 15時10分

スーパー・ササダンゴ・マシン選手は、ディーノ選手のフォローからわずか3分後に当該2ツイートを削除。

元の原稿(後述の「煽りパワポ」)についても反省の意を表しました。

最終的なRT数はわかりませんが、記憶ではディーノ選手のフォローが入る前くらいの時間帯で400RT弱程度になっていましたので、それ以上の数値にはなっていたと考えられます。

この段階ですでにプロレスファン以外の層にも当該ツイートが知れ渡り、発言内容に対する非難と、社長がそれを無批判にRTしたということは「そういう団体」なのだろうという失望も多く見られました。

 

・8月30日 15時54分

ツイート削除を受けてディーノ選手がまたもフォロー。

 

・8月30日 17時16分

高木三四郎社長もリツイートの件をお詫び。

 

・8月31日 18時16分

DDTプロレスリング公式サイトに「お詫びとお知らせ」が掲載され、Twitter上で告知される。

 

・8月31日 18時19分

スーパー・ササダンゴ・マシン選手も自らのアカウントでお詫び。

 

以上が事の発端と終息までの大まかなまとめになります。

 

 問題点

 当該ツイートの問題点は、どこにあるのでしょうか。

それをじっくりと洗い出してみましょう。

 

ツイート削除後のお詫びでも「元の原稿」として言及されていましたが、あまりに唐突なこの当該ツイート2つは、実のところ「Yahoo!ライフマガジン」に掲載された『プロレス界の「煽りパワポ」名人直伝! 心に響くプレゼンの極意』からの一言一句違わぬ引用でした。

引用という断り書きが無いまま発信されてしまいましたが、恐らく彼の目的はこの記事の宣伝であったと考えられます。

lifemagazine.yahoo.co.jphttp://archive.is/f5NGj(魚拓)

 

 ツイートとして引用されたのは、「プロレス界で言えば~」以下の箇所です。

f:id:nerilow:20160909120316p:plain

 

 この発言は、複合的な問題を孕んでいます。
そもそもKPIの話を外部に面白おかしく話そうとしているところが大きな間違いであり、様々な層がいる観客をすべて「一企業(DDT)の身内」として捉えて【内部事情】の話をするというキャラクター自体がそもそも危ういという結論(のひとつ)を出して一蹴してもいいくらいなのですが、それはこのエントリの本意ではありません。

 

まずは現代国語の問題として、一節ずつ見て行きましょう。

 

プロレス界で言えば、世間ではプ女子(=プロレス好き女子)だなんだと注目されていますが、それは私が届かせたい相手ではありません。

 ここでもうすでに少々言葉足らずの感がありますね。

また『プ女子だなんだ』という表現を選択している時点で、彼にとって『プ女子』は軽い存在であることがよく伝わってきます。

長めの補足を入れつつ言い換えるとしたら下記のような形になりますでしょうか。

「現状、プロレス界において世間様に話題を提供しているものと言えば、近年脚光を当てられるようになった『プ女子』(プロレス好き女子)という存在。プロレス界でもこの『プ女子』をターゲットとしてイベントや商品展開を行う動きが活発だ。しかし、私はこの『プ女子』に自分の魅力を届けたいとは考えていない」

……プ女子がメインターゲットではない、というのはただの宣言として特に問題ないですが、「届かせたい相手ではない」とシャットダウンするのは、この一節に限ってもやはり言葉が強すぎると感じます。

 

そもそも、広告代理店やテレビ局が作った幻想ですよ。一人当たりの消費量、支出額で僕を支えてくれるのは30代、40代の男性

「消費量」「支出額」という「経済力」がこの話題のキーであることが示されました。

ここは非常に大きなポイントです。なぜなら、ここは「僕」の話だからです。「僕」のファンは男性が多い、という話で終っていれば、特に問題は起きずに済んだことでしょう。この件に関して「何も大げさな」という感想を抱いている多くの人は、恐らくこの「僕」の印象を強く捉えているのではないでしょうか。

しかし国語の問題として捉えると、前節で彼は「私」という一人称を選択していました。記事の方を読んでも、基本の一人称は「私」です。これは公人としての一人称であり、DDTプロレスリングという団体での活躍のみならず、お笑いプロレス「マッスル」を立ち上げ、業界を動かしてきたマッスル坂井としてのパーソナルを前面に押し出してこの話を始めているのです。ですから基本的にこの一連の文章は「私」を基調に考えるべきでしょう。

ここで急に紛れ込んだ「僕」という一人称は、自分個人のファン(の男性)への語りかけが行われているだけにすぎません。短い文章の中で一人称が変わるのは混乱の元。「おれ」「わたし」「わし」が1ページの間に出てくる『北斗の拳』のラオウほどではありませんが……。
少し気になるところとしては、この「僕」には10代~20代や50代以降の男性ファン及び女性ファンは本当の本当に一人もいないのでしょうか。一人でもいたとしたら、単純に考えてかなり傷つきますし、相当な裏切り行為ですよね。

 

また前半の「『プ女子』という存在は広告代理店やテレビ局が作った幻想」という言及に関してですが、これはプロレスファンにとっては何を今更、という感じです。

広告代理店やテレビ局が(主に新日本プロレスへの)観客誘導を目的に作った「プロレスが流行っている、女性人気がある」感を演出するための言葉、それはその通りでしょう。そのハリボテが作られる過程を見てきた既存ファンなど、内部に居る人間にとって『プ女子』のイメージはあまりよくありません。

そもそも「○○女子」「○○男子」という用語は、既存の差別的な性規範イメージを踏襲し、性別が異なっている時点で見ているものが違うから理解し合えないはずだ、というファンダムの分断を図ろうとする下品で低劣な表現です。

ファンダム内部的な『プ女子』のイメージを上げるとしたら下記のような感じでしょうか。


・ミーハーで移り気
・内容を理解していない
・表面上の楽しさだけを消費している

一言で言えば「リスペクトのないミーハー」。
少なくとも、「素晴らしい観客」へ向ける表現としてこの言葉が使われているのを見たことはありません。
女性ファンの中にも『プ女子』を自称している人も居ないわけではありませんが、「まだ観戦を始めてから期間が短いので、作法がよくわかりません」という意味で使っている方が少々と、女性アイドル・タレントが自分のわかりやすいキャラクター付けのために名乗っているくらいというのが実情かと考えられます。

1年ほど前に「プ女子の知らないプロレス用語」というハッシュタグTwitterで流行りましたが、その内容のほとんどがただ昔あった出来事を書いただけというくだらなさを見れば、プロレス業界やそのファンダムにおいて『プ女子』がどれだけ馬鹿にされているのかがよくわかります。

作り出された用語にすぎない『プ女子』は、現実の女性ファンとノットイコールの虚像です。しかしそれをすべての人間が承知していれば、このハッシュタグのようなことは起きないはず。
これはつまり、「女は皆リスペクトのないミーハー」と考える女性差別者が内部に結構な割合で存在しているということの証明に他なりません。彼らがその差別思考をこの言葉に便乗させて使用することで、ただでさえ無礼なこのマスコミ用語がさらなる不愉快感を付随させる羽目になっているのです。


ですからこの言葉を業界内部の人間が使う場合、一体「どこ」に向かって喋っているのかということが重要になってくるのです。
「内部」→「外部」の場合は、女性ファンを指すマーケティング用語として、わかりやすさを優先し、あえて使った言葉になります。『プ女子』という呼び名に腹を立てている女性ファンとしても、この使用は腹が立つけどまあギリギリ仕方ない、という理解と許容の範囲でしょう。
しかし「内部」→「内部」に向かって使う場合は、先述のようなハッシュタグ遊びがある現状、ひとつの目配せがそこに含まれることになってしまいます。つまり、「あいつら(プ女子)とは違う本当のファン」に向けて語りかけていますよ、というエクスキューズサインが発生してしまうのです。

今回の場合は、全体のニュアンスを鑑みるとどちらの意味合いも等分に持っていたように感じられます。少し邪推にはなってしまいますが、流行語に逆張りして、その言葉に反感を持っている層の支持を得たいという下心がまるっきりないとは思えません。

 

余談になりますが、そもそも女性ファンという存在は、ずっとプロレス会場に存在していました。

今よりもテレビ放送が多く、各団体でビッグマッチが毎月のように行われていたパイの大きな時代は当然のこと(全女が横アリを満杯にしていたことを考えれば、今の女性ファン率は減少していると言えるのかもしれません)、下火と言われたゼロ年代中ごろでも、いつの時代の試合映像を見返しても「黄色い声援」はそこにあり続けてきました。

大体、広告代理店やテレビ局が『プ女子』という用語を作ったからと言って、突然そこに女性が現れるわけがありません。女性たちは元々そこに居ました。先ほど流行演出のための用語と書きましたが、付け加えて言えば、曖昧なまま存在し続けていた女性たちを明確なマネタイズの対象とするため、彼らによって新しく与えられた名札が『プ女子』だったのです。

確かにゼロ年代までのプロレス業界の大半において、基本的に女性ファンは団体レベルでの営業戦略面ではあまり考慮されない存在でした。(国内ではないので指標としては弱いですが、グッズ展開が多く、この方面においてかなり先進的と言えるWWEが、現在Womans sizeとしてほぼ全種に適用されているフィットタイプのTシャツを販売し始めたのが2002年頃でしょうか? ただしこれはトップ中のトップスターに限ったことで、ほぼ全種に用意されるようになったのはかなり最近の2010年以降です。まあフィットタイプを女性用として出すことも、フェミニズムの現場では批判されているのですが…*1
しかし足しげく観戦に通う姿やマーチャンダイジングへの支払いなどと言った面に関しては、男性とさして変わらない態度である、もしくはより積極的であろうというのが現場の実感です。女性ファンは母数こそ多くはなかったかもしれませんが、いつでも惜しみなくプロレス業界にお金を落としてきました。文句も言わずに。それにも関わらず、今でもこの扱いなわけです。

さらなる余談として言うのならば、そもそもミーハーで何が悪いのでしょうか。迷惑さえかけなければ、楽しみ方は人それぞれでしょう。

ついでに言うと、ミーハーなものの見方をしている層というのは、性別とはあまり関係なくどこにでも一定数存在するものです。ミーハーな男性、いっぱいいますよね? 何故女性ファンだけが、ミーハーであることのスティグマを負わせられなければならないのか。それが女性差別でなくてなんだと言うのでしょうか。

 

黄色い声援は硬貨、男性の声援は紙幣

話を戻しましょう。

この箇所が最も反感を買っているところです。

「女性ファンの声援の価値は低い。男性ファンの声援こそ価値がある」

そもそもこんな言葉が21世紀を15年も過ぎた今、平気で通用すると思っていること自体どうかしていると思います。
しかしこの国のものづくりの現場ではいまだに、どんなに女性の支持を集めても無意味、男性が支持してこそ「本物」であるというような差別的信仰がまかり通っているのは事実です。野蛮すぎます。けれどそれがまかり通っているからと言って、対外的にそんなことを公人が言うことはまず有り得ません。それくらいの社会道徳はどんな企業・公人でも持ち合わせているものです。

国語の問題として見ると、前段まではまがりなりにも個人的な話だったにも関わらず、ここで主語の無い転調が入ることで、一気に「一般論として」話している形になってしまうのです。せめて「僕にとって」という表現が頭にくっついていれば、ここまでの大事にはならなかったかもしれません。

「女性」という単語すら使わず、「黄色い声援」という言葉を代入しているのも印象が悪いですね。

 

これは実感ですが、実際にそういうデータ取りをちゃんとやっていて、その人たちが喜んでくれそうなこととして始めたのが煽りパワポなんです。

 ここでまた主語のない言い回しが続くため、前節の「一般論化」効果がさらに進んでしまっています。

データ取りをしたというのは結構ですが、どこでどういうデータを取ったのかという説明がありません。そのため、言及されているデータが「僕」のマーチャンダイズのみを対象としているのか、DDT全体のマーチャンダイズに関してなのか、はたまたもっと大きくスポーツやエンタメ全般におけるグッズ購買層にまで広げた話なのかわからないのも大きな問題点。

恐らくではありますが、前節の一般論化の転調が差し挟まれたことによって、「一般論」と「僕」の中間地点である「DDT全体のマーチャンダイズ」のことであると読んだ人が多いのではないでしょうか。

煽りパワポ記事の方の続きを読むと、編集サイドからの「現状分析のための、アンケートなどでのデータ取りの必要性」という一文があるため、どこかでアンケートを取っていたのかもしれませんが……。何にせよこれもどこでどういう対象に向けて取ったアンケートなのかわからないままでは、論ずるに値しません。

前節とあわせて読むと、「30代、40代の男性で、日常的にパワーポイントを使用した企画プレゼンなどに接している会社員を対象にすると、紙幣をじゃんじゃん使ってくれるので、彼らを優遇していきたい」と読めます。しかしその根拠となるデータは典拠がわからず曖昧なもの。文頭に「実感」という言葉が使われていますが、その通りこの文面においては彼の「感覚」に依拠したものでしかないのです。

 

 これを気に入って30代、40代の方が会場に来てくれて、その人たちは今は会社では中間層ですけど、出世すれば、チケットをまとめて買ってくれるようになる。そういうビジョンも大切なんです。

ここで女性ファンを「対象」から外した理由を、個人が持つ「経済力」の安定性と発展性に結び付けてしてしまったのは、この一連のツイートの中で最も批判を免れ得ない箇所でしょう。これまでの文章がかなり女性ファンを煽り倒すような内容を含んでいた上での、この経済問題への言及は決定打です。これは炎上しますよ。

何故企業に勤めている男性でなければ彼の「対象」になれないのか? それは「出世しないから」。

はっきり言って、最もわかりやすいフレーズであったために反感を買っている硬貨云々は、まだ言葉遣いの過ちとして処理することはできます。腹は立ちますが、失言レベルの問題に抑えることは可能です。

しかしここで、女性の経済力、企業における立場を「理由」としてしまったことは、女性差別的な制度・慣習が未だに続く日本の労働環境の肯定、ひいては差別の肯定でしかありえないのです
「男性は出世する(女性は出世しない)」としている時点で、女性差別の構造が社会に存在していることに思い至らなかったとは言わせません。

現代の日本において、女性と男性の経済力は不均衡な状況です。
「性差」と「経済力」を結びつけて語る時、まず前提としなければいけない現状の問題をまったく考慮しなかったというその態度こそが、今回の炎上の原因であり、問題点なのです。

「企業で出世の見込みがある白人男性をメインターゲットにしています。(黒人は出世しないから)」と言い換えれば、この表現がどれだけやってはいけないことなのかがわかるでしょうか。

 

知らなかった、という方のために性別格差の現状を以下にまとめましょう。

ササダンゴ選手が示したように、2016年においても女性が出世して管理職となる確率は大変低いです。

今年8月に帝国データバンクがまとめた「女性登用に対する企業の意識調査」によれば、企業における女性管理職比率はなんと6.6%。管理職が全員男性で女性が1人もいない企業は50.0%にも及ぶとのことでした。昨年のヘイズの調査においても、外資系企業との合算にも関わらず、19%というアジアでも最低の数値が出ています。

政府は2020年までに女性管理職比率を30%までに引き上げたいとしていますが、残り4年でそれが達成できるとはまるで思えない、惨憺たる女性差別的労働環境と言えるでしょう。

www.nikkei.com

何故企業において女性の管理職が少ないのか。それは当然ながら、能力の問題ではありません。

物理的要因として、そもそも企業内に管理職となる年齢層の女性が少ないのです。日本企業には男女雇用機会均等法以前、新卒女性を「社内結婚相手」として採用し、寿退職させ続けていた過去がありました。人事というか女衒ですね。最低です。また出産後の復帰システムも機能していなかったため、女性は管理職の年齢になるまで企業に残ることができなかったのです。

当然ながら最も大きいのは、社会構造の問題です。

①長期継続雇用前提の年功的な内部昇進

②配偶者が専業主婦の世帯主を暗黙の前提とした長時間労働や頻繁な転勤等の働き方

③専業主婦世帯を優遇する税制や社会保険制度

なぜ女性管理職は増えないか 「30%目標」を遠ざける“日本的雇用慣行の疾患”|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

 これらを前提とした社会制度や慣習が、女性のキャリアアップを阻害しているのです。人口が低下し、労働力も減少しつつある今、女性のさらなる社会進出とそれを支えるワークライフバランスの見直し・是正は、どんな企業においても喫緊の課題。しかしまず男性が意識を変えなくては、何も始まらないのです。黒人奴隷の解放を宣言したのは白人大統領のリンカーンですよね。不当に支配する側にいた者が、その自覚を持って過ちを正さなければ、平等な世界というものは来ません。

管理職採用の問題だけでなく、さらに言えば日本の男女賃金格差は主要25カ国中ワースト2位なんですよ。

2014年度に経済協力開発機構OECD)が加盟国34カ国を対象に行った調査では、全日制労働者の性別賃金格差は28.7%。最も格差が少ないハンガリーの3.9%に大きな差をつけられています。

www.huffingtonpost.jp

そんな状況の日本ですから、世界経済フォーラム(WEF)が毎年調査・発表している男女平等(ジェンダー・ギャップ)指数ランキングで、いまだに先進国の中で唯一100位の壁を超えることができていません。2015年は101位。項目別では経済活動の参加と機会が106位、教育が84位、健康と生存が42位、政治への関与が104位です。

memorva.jp

これが現代日本における女性の現状なのです。
明白に、数字の上で女性差別が存在しているのです。
「女性」と「経済力」に言及する場合は、最低でもこの現状認識を持っていなければ、意味のある言説はまずもって作れないと断言して良いでしょう。

現状環境を無自覚な下敷きとして立てた論説は、「差別を気にも留めていない」という無神経さを露呈するのみ。

今回の件を問題視した多くの人は、その無神経さにこそ腹を立てているのではないでしょうか。

 

まとめ

「お詫び」の文に誤解という言葉が重ねられていましたが、別に誰も誤解などしていません。彼が意図的に女性差別を行おうと思ったなどと解釈している人間はいないでしょう。ファンの分断を行おうとはしていましたが。

彼はただ、あまりにも不用意な言葉で、現代日本の女性差別的社会構造を見てみぬふりをし、何なら軽くミソジニーを抱いて生きてきた男性であるという地金を露呈させたのみにすぎません。男性優位構造にどっぷり漬かって生きてきた日本人男性にはよくあることです。

しかしながら表現者であり、公人である人間がやってはいけないことですし、率先して改めていくべき事柄ゆえに、今回の炎上事件は起きたのです。

何にせよ「マーケティング」を踏まえたプレゼンという表現形態を取ったことが、不用意にもほどがある言葉を死ぬほど並べてしまう要因となり、その社会人キャラクターゆえに真っ当な批判を浴びることになったと言えるでしょう。キャラクター相応の責任を被ったという形です。
例えばバラモン兄弟が水やドッグフードを撒きながら「プ女子来るな!」と言ったところで、わざわざそれを糾弾しようとはあまり思いません。ご兄弟のことが好きですからちょっと傷つきますけど、そういう差別問題に関して女性差別以外にも様々な綱渡りをしているキャラクターなのは先刻承知ですので……。

ササダンゴ選手の発言は、先ほど一節一節ごとにバラして見ていきましたが、見事に全ての節が不用意ですよね。

□プレゼンのテクニックばかりにこだわっていないか?
□自信満々すぎて、態度が大きくなっていないか?
□勢いに乗って、独りよがりの内容になっていないか?
□最後まで確認をしたか? 誤字脱字は絶対見逃してはいけない
□誰のためのプレゼンか、何のためのプレゼンか、明確になっているか?

 この「煽りパワポ」の〆が誤字脱字を除いてほぼブーメランとなっているあたり、この社会人キャラクター自体が彼に向いていないのではないかと心配な気分にさえなります。

文章を作る時は「悪魔のような細心さ」を持ちましょう。私も気をつけなきゃ。

 

まあ、私もこうしてあらましを書いていますが、彼に対して怒っている気持ちというものはもはやさほどありません。自分の発言がプロレス界のためにならないものだと自覚した時点で、被差別者の側に思考を及ばせたであろうし、今後も表現を行う上で考慮を入れるようになるだろうと思えたからです。

私が個人的に怒りを覚えたのは、今回の件を横から「大したことじゃない」と庇った普通の日本人たちに対してです。

すでに問題が提起されたにも関わらず、相変わらず見て見ぬふりを続けるということは、差別の共犯者であり続けることを選び取ったことと変わりません。

この男性優位が当然とされている世界に生まれ、幼い頃から女性蔑視的なコンテンツを浴びるようにして育った多くのごく普通の人たちが、そういった考え方から脱するのは非常に困難なことでしょう。それはわかっています。

男性だけでなく、楽に生きるために差別的現状から目を背け、ミソジニーに染まった思考を内面化した女性たちも大変多いのが現状です。

うんざりするような世界ですが、しかしそこであきらめてしまっては、この状況は変わりません。私自身がいやだというのもありますが、何より友達や好きな選手の娘さんたちにこんなクソみたいな気分を味わって欲しくないのです。

 

 おまけ:その後の顛末

 今回かなり迅速な処分が行われたことで、DDTの株はさほど落ちずに済んだようです。ミソジニー丸出しな男性ファンや、名誉男性気取りの女性ファンからは処分が重すぎるという声もあるようですが、妥当な処分だと思います。普通のコンプライアンスがある企業だったら契約解除&更迭ですよ。

とはいえササダンゴ選手の心配どおり、この件を知ったプロレスファンダム以外の方からは、DDTという団体で起きた問題としてではなく、「プロレスってそういう差別発言がまかり通る世界なんだな」と大きく捉えられ、記憶されてしまっています。これは本当によろしくないことです。

私はプロレスというジャンルを愛していますし、戦いとスポーツと芸術がミックスされた素晴らしい世界だと信じています。ゆえにその世界の主役であるレスラーたちには、相応のリスペクトを受けて欲しいので、よく知らない人から「プロレス業界って野蛮で後進的」と思われているのを見るにつけ、大変悲しい気持ちになってしまいます。

 

またTwitter上では、男色ディーノ選手のフォローが良かったという層と、彼の問題を誤魔化すような茶化しに失望する層が8:2くらいの割合で別れたようです。

私は失望している側なんですけど。だってそもそも最初のこのツイート。

 明らかに「不正解」の事例に対して「正解も不正解もない」というふんわりした肯定を示しているのは、どう考えても許容できるものではありません。本人は「喧嘩両成敗」くらいの気持ちなのかもしれませんが、差別という事実について中庸な態度はありえません。「ちょっとだけ差別してるけど許して」などという態度を被差別者がOKとするわけがありません。

というか、ディーノ選手は私が上記に延々あげたような問題点をわかった上で話題の焦点をずらしているようにしか見えないんですよ。

我ながらササダンゴ選手は無自覚であろうと断じ、ディーノ選手は意識してやっているだろうと考えるのはまあ彼らのキャラクターの差でしかないのですが……。

ディーノ選手はDDT総選挙でも常に上位の人気者。Twitter上でも含蓄のある人生相談などをしていて、皆が「嫌いになれない」立ち位置を確立していらっしゃいます。私も色々どうかなと思うところもありますが(ゲイ=変態のステレオタイプギミックはゲイコミュニティーに属しないゲイ男性が特に嫌がるものであるという話を知って以来複雑な気分です)、基本的に好意を持っています。

その人が「友達だから」と言うことの威力は、元からのDDTファンや彼を知るプロレスファンには非常に有効です。先ほども書きましたが、恐らくこれはわかった上で火消しをやっているのでしょう。

ただ逆に、彼のことをよく知らない人間からすれば、何いきなり生ぬるい言葉でミソジニストを庇っているの? 「失言」レベルに問題を矮小化をするのはどういうつもりなの? という話です。

一度ササダンゴ選手に怒った人たちの間でも、その後の反応が分かれたのは、ディーノ選手の人柄を知っているか知らないかの差が大きな要因でしょう。特にプロレスはプロレスでも、アメリカンプロレスのファン層が憤っていたのはそういうことだと思います。

そして実際、「次の新宿大会」で、ディーノ選手は見事にこの件を「ネタ」として丸め込んでしまいます。

 

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ツイッター炎上のスーパー・ササダンゴ・マシンがリングで謝罪=DDT (スポーツナビ) - Yahoo!ニュース

 

 見事な火消しの手並みだとは思いますが、「正解も不正解もない」などと言ってやんわりと差別意識を肯定し、差別への怒りを「失言を叩く」レベルのちょっとした癇癪程度に引きずり落としたことは私は絶対に忘れません。

最も注意すべきは、こういうわかっていそうでわかっていない(あるいはわかっていて無視をする)、口のうまい人だということを改めて確信させられました。

 今回の件に関しては、許すが忘れない、というのが個人的な結論です。

 

このエントリはあくまで記録と検証のためにまとめたものですし、処分がされた今、もう一度上述の選手たちを糾弾しようという気持ちは私にはありません。

ただ、今回の件を機にファンも含めてこの問題に触れた人々が、女性ファンや女性の置かれている社会的立場に関してきちんと捉えなおしをしてくださることを願うばかりです。

*1:※実はフィットタイプではない形の女性向けTシャツも、女性人気の高いスターに限って、90年代後半すでに販売されていた模様。袖だけがぴったりと絞られたかわいいデザインで、何故これがなくなってしまったのか残念でなりません

虚構の力・ちょっとだけ追記

 

gazesalso.hateblo.jp

 

↑こちらのエントリで書いた『シン・ゴジラ』の感想に、もうすこしだけ書きたいことがあったので。

 

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虚構の力

月初めにお誘いを受けて『シン・ゴジラ』を観てきました。最近本当に映画を観に行く回数が減っているので、タイムリーに新作を観るというのはかなり久しぶりです。

すでに巷間では喧々囂々意見の大合戦状態なので、大体言いたいことを言ってくれている方も出尽くしていて、今更新規に何か言うべきこともないかなあとは思うのですが、めずらしく新作を観たので感慨を残しておこうという気持ちでエントリを開きました。

以下ネタバレがありますので、基本的に鑑賞済みの方だけ読まれるように願います。

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少女閣下の独裁政権

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 少し時間が経ってしまいましたが、7月8日に少女閣下のインターナショナル活動休止前ラストライブ『少女閣下のインターナショナル殺人事件』に行ってきました。
会場となった新宿MARZは超満員。基本的に腰をイワしている身でもあるので後方でタイガー観戦を選んだ私は舞台がほとんど見えませんでした。肩車されたりダイブでオタクの頭の上をころころ転がるメンバーが見えたくらいかな? それでもMARZの良い音響と臨場感で十分満足できましたし、やはりあの場に居られて良かったという気持ちです。過去脱退した雨宮あまめ、二文字杏の二人も揃った七人少ナショは、本当にヒーロー大集合の趣きでした。
ありがとう少ナショ、また会う日まで。もし会うことが無くても、「それはそれで」皆それぞれの道を楽しく力強く歩んでください。

 

 最初で最後のアルバムとなった『殺人事件』も素晴らしい作品で、皆の姿をライブで見ることができなくなっても、曲は永遠に流し続けられるので寂しくは無いです。音楽は永遠性が高いなあ。
『怨み節/マカロンウエスタン』と『No where on-do』が特に好きです。『No where on-do』は初披露の渋谷eggmanで杏ちゃん(あえて選ぶなら少ナショ一推しでした)が間奏の間に次々と他メンバーを殺害していったパフォーマンスも含めて、心に残る一曲となっております。
へんてこアングラテイスト良楽曲群とそれをあやうい綱渡りで表現しきったメンバーの素晴らしさ、小ナショの魅力が詰まった一枚でした。

 

 

殺人事件

殺人事件

 

 ↓こちらでハイレゾ版の試聴もできます。

ototoy.jp

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以下は、 少ナショに出会って考えたことなどを散漫ながらメモっておこうと思います。

 

ヒーローになってあげるよ

私の本現場(?)は現在基本的にプロレス観戦(全日本・NOAH中心)です。アイドルはハロプロが好き…と言っても一番大好きだったBerryz工房も活動停止している今、アイドルに対してはさほど積極的なモチベーションを持っておりませんでした。ましてやインディーズアイドルと接点を持つことなど、冷静になって考えれば大変なイレギュラーです。
しかし現場までのステップはごく単純でした。

2015年9月28日、私の現在の一推しである潮崎豪選手が全日本プロレス退団を発表。箱としての一推しである全日本という団体から個人としての一推しが去ってしまうショックは計り知れず、完全なるパニック状態に陥る

パニックが続く10月中ごろ、愛読しているロマン優光さんのコラムで、プロフィールが「少女閣下のインターナショナルの里咲りさに夢中」に変わっていることに気付き、なんとなく検索にかける

『真夜中のニャーゴ』の少ナショ回を見て、お金の話を何度もする里咲社長のギラついた計算力に引きずり込まれる(私の一推しに無いのはこういう部分だなーと真剣に思っていた)

youtu.be

ソロ咲曲を聴いて好きになる

気がついたら大阪FANJtwiceでの『皆殺しフライデー』を何度も聴いていた

youtu.be

11月1日、渋谷eggmanでの初ワンマンがあると知り参戦

まずパニックから始まっているのが酷いですが、心が弱っていたところにスッと現れた少ナショは、まさに「ヒーローがいないならヒーローになってあげるよ」という歌詞そのまま、へんてこなところから私に手を伸ばしてくれたヒーローでした。
(その後少ナショ活動休止発表の5月2日から1ヶ月足らずの5月28日、潮崎選手はNOAH大阪大会でGHCヘビー級王座を戴冠、心のヒーローとして完全カムバックしてくれたことも、なんというか奇縁…へんてこ縁ですね)


これが少女閣下の独裁政権

私はインディーズアイドルシーンに無知な人間なので、彼女たちの特殊性を他のアイドルたちとの対比で語ることはできません。恐らく少ナショが生まれるべくして生まれた道筋などが存在しているとは考えられますが、それを知るには現場性の高いインディーズシーンの沼は深すぎるもの。
ただ、活動休止に際して書かれた以下の二つの記事、そして新宿MARZで購入したタブロイドのインタビューから垣間見える彼女たちやスタッフさんたちの思いを汲み取り想像してみることはできるかもしれません。

note.mu

ototoy.jp

そして忘れてはならないオタクたち(ナ庶民)。

 

なんとなく、少ナショの楽曲世界観に現されるアングラ感は長田氏由来のもの。それを生身のアイドルとして再構築したのがメンバー。それを肯定し世界観として造り上げたのがオタク、というように私には思えました。
インディーズシーンに詳しくない人間でも、これが稀有な事例であることは察せられます。
アングラな大人と、アングラを目指してはいなかった少女たちと、少女たちを肯定することに命をかけるオタクが奇跡のバランスで噛み合ったのかもしれません。そのすべてをくっつける糊になっていたのが里咲りさ社長という、大変才能のある女性であることは言うまでも無く。
このまま続けてメジャーになることもできたのでは? そういう実力を彼女たちは保持していたのでは? という意見も見かけました。気持ちはわかります。しかし、恐らくこの奇跡はインディーズで、しかも彼女たちがこの年代であるからこそ起きたものでしょう。これ以上路線を明確化するには、「本気でアングラ表現を目指す」or「アングラは風味だけに抑えたアイドル」に舵を切る必要が出てきてしまうでしょうし、そうなれば『殺人事件』のような奇跡のバランスはいずれにせよ失われてしまいます。
個人的にはやはり、アングラ志向のメンヘラ系女子ではない女の子たちが、地下劇団のようなことを楽しくワイワイとしているのが面白かったです。
魔法使いのお兄さんにかわいいステッキをもらいに来たのに、大きなアーミーナイフを渡されて、戸惑いながらも構えたその手をオタクが支え、結果的にみんなで楽しく遊んじゃったみたいな感じ。女の子たちは大きな武器を振り回す楽しさに自分を解放し、魔法使いのお兄さんは自分の武器が活用されているのを眺めて楽しみ、オタクはお祭り騒ぎ。
少女閣下の独裁政権は、大いなる共犯関係によって成立していたのかな、と思います。

 

 ★少女閣下の世界征服

ワンマンの感想でも書きましたが、少ナショはみんな表現への欲求とパワーが爆発していたのが本当にすごかったです。

 

gazesalso.hateblo.jp

前世紀末で青春を終らせた人間なので、今まであまり実感していなかったのですが、女性アイドルというのはもう、表現に飛び込みたい女の子たちのひとつの手段となっていたんですね。
私達の世代の頃は、表現衝動は同様に存在していたものの、実際に舞台に立つまでのハードルはもっと高かったように記憶しております。男の子たちがバンドを組むような感じで飛び込める女の子の世界というものが、なかなかありませんでした。あえて言うならギャルサーの雛形みたいなものがそれに類するものであったかもしれませんが。(過剰なヤマンバメイクなども表現衝動の現われだったと言えるでしょう)でも田舎にはギャルサーなどありませんし、若い女の子の自己表現衝動に対して門戸を開け放していてくれていたのは、アジール的なファン・バンギャ文化や、オタクや同人誌の世界くらいだったというのが狭い観測範囲ながら私の実感です。
でも2016年現在、女の子たちはアイドルという手段を得ているのだなあと。
男性が作り出した虚像的な側面のあるアイドルという仕事を、今や自分たちの道具として支配下に置いた…というと大げさかもしれませんが、そういう感慨を覚えました。よかったね女の子。まだまだ騙されたり傷ついたり、搾取されたり無碍にされることも多いとは思いますが、願わくば女の子たちのそういったパワーがこの世界を征服することを望みます。

 

 

もっとたくさんの女の子たちが、わたしがわたしでいられるばしょにたどりつけますように。

それがたとえ一時のものであったとしても、そういったばしょを知った人間は強く生きていけることでしょう。

 

 

 

最後に、1月にあった二文字杏脱退公演『本日の二文字杏』で杏ちゃんと撮っていただいたチェキを貼っておきます。

私の人生初チェキであり、今のところ次の予定はありません。

撮影前に杏ちゃんは私に対して「お金もってそう…!」と言っていました。しかし実際の私は大変貧乏なサラリーマンなので、杏ちゃんのお金もってそうスカウターの性能があがることを望んでやみません。

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こちらこそ歌を聴かせてくれてありがとう。

杏ちゃんの毎日が楽しく明るいものであることをお姉さんは祈っております。

悪魔には鏡を

 『死人は語らない。死んでしまった人たちが語ることができたら…私たちは生きていられるだろうか? 泣いても泣ききれない。言葉の代わりに涙が出て……』

私は、そういう人たちに頼む、話してください…黙っていてはだめ。悪魔には鏡を突きつけてやらなければ。「姿が見えなければ、痕跡は残らない」なんて悪魔に思わせないために。その人たちを説得する……先に進んでいくために。自分自身も説得しなければならない。

(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』岩波現代文庫版・P372)

 

2015年度のノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』と『チェルノブイリの祈り』を続けて読みました。

どちらもインタビューによる当事者の肉声を作者の手によって再構成したドキュメンタリーです。「ドキュメンタリー文学の最高峰」という帯文に違わぬ凄まじさを持った二冊でした。スヴェトラーナでなくてはこれらの言葉を発した人々を見つけ出せず、また彼女でなくてはこれらの人々からこうした言葉を引き出すこともできないでしょうし、何より彼女でなくてはこれらの声や叫びを編み上げ、ひとつの合唱曲へと昇華させることはできなかっただろうと断言できます。

取り上げられた人々はそれぞれに個性を持ち、それぞれに異なる方向を向いた人間です。まず、読者が触れるのは人間の多様性です。焼き尽くされるソドムとゴモラを直視した人々が林立する塩の柱の森。それぞれに刻まれた相貌は固有の、彼や彼女でしか持ち得ないものです。彼らは皆個人的な体験を話しています。歴史というにはあまりに小さな欠片たち。しかしスヴェトラーナはこれらの小さな小さなパズルのピースを並べ、この巨大なふたつの災厄を直接見ていない読者たちにも、その恐怖の全体像を感じさせることを成功させました。

ソ連という国家を舞台にしたドキュメンタリーというと、特殊な社会体制ゆえに生まれた悲劇であろうと憶断する人もいるかもしれません。

しかし、読み始めればすぐにこれは普遍的な人間の話であることがわかるでしょう。いつの時代も変わることのない人間の死、人間のあやまち、人間の苦しみ、人間の愛、そして尊厳と生の物語がそこにあります。

 

◆『戦争は女の顔をしていない』

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

 

ソ連は世界でも先駆けて、憲法に男女平等を謳い、その理念どおり女性も兵士として戦場へ赴かせた国家でした。ただ理念は先行していたものの、実情はなかなか伴わず、女性の扱いは必ずしも平等ではなく、女達は旧弊的社会が連綿と守り続けてきた「女という性別のありうべき態度」という見えない規範に苦しめられ続けます。(これは現代日本とほぼ同じ構図ですね)

独ソ不可侵条約ナチスの侵攻によって破られ、戦争が始まった1941年、スターリンは開戦の演説で、これまで掲げてきた共産主義の理念を口にしませんでした。「大ロシアの兄弟姉妹たちよ」と語りかけ、人々が持つ国土愛の覚醒を促したのです。戦争の名前は「大祖国戦争」。ナポレオンの侵攻を防いだ1812年の「祖国戦争」にあやかった名前です。これは36年~37年の大粛清を経た国民たちにとっても強く響く言葉となり、志願兵の登録所には老いも若きも人々が殺到しました。

私の叔父はコルイマの収容所に入っていたの。おかあさんのお兄さんで鉄道に勤めていた。昔からの共産主義者だったの。それが職場で逮捕されて誰が逮捕したか分かるでしょ? 内務省(NKVD)よ。うちの大事な叔父さんを。私たちは叔父さんがまったく悪くないって分かってたわ。信じていた。だって国内戦(1917年のロシア革命の後につづいた革命軍と反革命軍の戦争)の時にはもう勲功をたてていた人よ……。でも、スターリンの演説のあとでおかあさんは言ったの、「祖国を守りましょう。どういうことかはそのあとで考えましょう」って。みんなが祖国を愛していわ。私はすぐに徴兵司令所に駆けつけた。扁桃腺を腫らしていたのに。まだ熱が下がりきっていなかったけど。私は待ちきれなかった……。

エレーナ・アントーノヴナ・クヂナ 二等兵(運転手)

女性たちも国土を守らねばという愛国心に燃え、多くの女子学生や結婚したばかりの若妻、主婦まで様々な立場の女性が登録所を訪れました。しかし、当初軍の方では、女性の採用に対して消極的な思いがあったようです。そこには「女性が使い物になるのか?」という疑念と共に、「守るべき女たちを戦場に追いやるなどというむごい決断はしたくない」という哀れみがありました。しかし、電撃戦によって先手を取ったナチスに次々に都市が落とされ、包囲されていく現実にもはやなりふりも構っていられず、女性たちは適性を計られ、軍の様々な仕事に就くことになります。

その日に私は十八歳になったのです。喜びにあふれていた。私にとってはお祭り。まわりではみなが「戦争だ!」と叫んでいて、みな泣いていたのを憶えています。街で会う人みなが泣いていた。祈っている人もいた。見慣れないことだったけど……。外にいる人たちがみな泣いたり、十字を切ったりしていたんです。学校では神なんていないと教えていたのに。

セラフィーマ・イワノーヴナ・パセナンコ 少尉(自動走砲大隊準医師)

母は汽車に駆け寄ってきた……。母は厳しかった。決してキスしてくれたり、ほめてくれたりしたことがない。何かよいことをしてもただやさしくながめるだけ。それが、突然駆け寄ってきて、あたしにかじりついてキスをするの。何度も何度も。そしてあたしの目をのぞき込んだあの目! じっと。長いこと……。おかあさんにもう二度と会えないんだと悟った。

タマーラ・ウリヤノヴナ・ラディニナ 二等兵(歩兵)

話を総合すると、若者たちは血気にはやり、第一次世界大戦からの長い内戦期を知る中高年は嘆き悲しんでいたようです。そうした戦争経験を、これらの世代は若者たちに伝え損ねていたのでしょう。

戦闘機のパイロットや狙撃兵、戦車兵から、通信兵、工兵、衛生兵、洗濯兵、炊事兵、戦場のありとあらゆる場所に女性たちは赴きました。彼女たちの華々しい活躍を知りたい方には、エースパイロットのリリー・リトヴァクをメインに書かれたブルース・マイルズ『出撃!魔女飛行隊』をお勧めします。タイトルはちょっとひどいですが、内容は誠実で、やはり華々しい活躍の裏側もきちんと書かれた良書です。

出撃!魔女飛行隊 (学研M文庫)

出撃!魔女飛行隊 (学研M文庫)

 

 『戦争は女の顔をしていない』ではこうした戦史に載ることのない、一般兵やパルチザンたちの証言が取り上げられていきます。文庫にして482ページに及ぶ彼女たちのあらゆる種類の言葉、証言、祈り、呪詛、そこにこめられた感情はひとつひとつまったく異なる趣を持ちます。女という性別でひとくくりにされることのない多様性。階級や部隊名に興味が無い女が語り終えるや否や、部隊名や作戦名、日時その他諸々を細かく記憶した女が語り始める。少しでもおしゃれをしたくて包帯のガーゼを軍服の襟にまるでレースのように縫った女もいれば、もはやおしゃれに興味をなくし、詰襟の軍服が自分そのものになってしまった女もいる。

この本の紹介をしている文章をいくつか読んだのですが、やはり「女特有の感性(とされているもの)」の側のみを拾うものが多かった印象です。女性の工兵小隊長の話よりも恋の話が珍しいと思われるのは仕方が無いのかもしれませんが、それではあまりにも片手落ち。

タイトルが『女の顔をしていない』なのも本当はふさわしくないのではないかと思います。正しくは、『戦争は人間の顔をしていない』のです。

結論から言えば、女たちは男性と同等に働き、同等に苦しみ、同等に歪み、同等に傷つきました。取り返しの付かない傷、欠損、決して癒えることのない精神的外傷。繰り返されるのは、戦地では男たちとまるで兄妹のようであったという言葉です。始めは女性の働きを認めていなかった男たちも、やがて認めるようになり、そして助け合わなければ生き残れないと理解するようになるのです。

衛生兵というと後方で安全なイメージですが、実際は異なります。歩兵たちが撃ち合う戦場で、負傷した者がいればそこに飛び出し、動けなくなった者を引きずって自陣へと連れ帰るのが第一の仕事なのです。

洗濯兵ならどうか? あまりの洗濯物の量と重さに、彼女たちの部隊は残らず脱腸しました。戦場で尊厳を保っていられる人間などいません。

最も悲惨なのはパルチザンたちであったかもしれません。森に隠れ、ナチス占領下の村々の解放を目指して戦う彼らは、村に残した自分たちの家族を人質に取られ、弾除けにされたり拷問をされたりするという苦しみを背負って戦わなくてはなりませんでした。飢えに苦しみ、匿ってくれた人々を殺され。ぼんやりした感覚ですが、21世紀に戦争が起きると「出兵」というよりこちらのパルチザン状態に似たものの方が一般的になってしまうのではないかという恐怖感があります。

 やりきれないのは、戦後の話です。

戦地に行った女たちは、銃後に残った人々から忌まわしい存在として扱われ、まっとうな生活に戻ることができなくなってしまうのです。

先にも書きましたが、男女平等の理念は先行していたものの、実質的な生活に浸透しているとは言いがたい社会でした。そこで従来的な「女の規範」を超えた人々は、忌み嫌われ様々な悪罵をもって迎えられたのです。戦地では肩を貸しあった男たちは沈黙し、彼女たちを庇うこともありませんでした。 赤星勲章などそこでは役に立ちません。

彼女たちはほとんどみんな、ごく普通の少女たちでした。ごく普通に育ち、ごく普通の感覚で自ら志願して戦地に行ったのです。多くの者は戦地で尊厳を失って倒れ、生き残った者も残りの人生を歪なものへと大きな力で決定的に変えられてしまいました。

訊きたい……もう訊けるわ……私の人生はどこへ行っちゃったの? 私たちの人生は? でも私は黙っている。夫も沈黙している。今だって怖いの。私たち怖がっている……恐怖のうちにこのまま死んで行くんだわ。怖いし恥ずかしいことだけど……

ワレンチーナ・エヴドキモヴナ・M パルチザン(連絡係)

夏になると、今にも戦争が始まるような気がするんだよ。太陽が照りつけて、建物も、木々も、アスファルトも温まってくると、あたしには血の匂いがするのさ。何を飲んでも食べてもこの匂いからのがれられない! きれいなシーツを敷いても、血の匂い……

(中略)

薪の数よりもっと死体を見て来たよ。白兵戦の恐ろしさときたら、人間が人間に襲いかかっていくんだよ。銃剣を構えて。どもってきて、何日もまともに舌がまわらなくなったよ。戦場に行ったことのない人にこんなこと分かるかね? どうやって話したらいいのか、どんな言葉を使って? どんな顔して? 言ってご覧よ、どんな顔してこういうことを思い出しゃいいのか? 話せる人もいるけど、私はできないよ……泣けてきちゃうよ。でもこれは残るようにしなけりゃいけないよ、いけない。伝えなければ。世界のどこかにあたしたちの悲鳴が残されなければ。あたしたちの泣き叫ぶ声が。

タマーラ・ステパヴノナ・ウムニャギナ 赤軍伍長(衛生指導員)

 

 ◆『チェルノブイリの祈り』

チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)

チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)

 

 

この本が最初に日本で刊行された1998年、これらの証言はある種SF的な物語として捉えられたかもしれません。終焉を迎えた統制国家と、終末思想に濃く彩られた滅びゆく世界の描写として。

しかし2011年に東日本大震災とフクシマ原発事故をすでに経験した日本にとって、これは有り得たかもしれないひとつの未来であり、また進行している現在でも有り得る当事者性を帯びています。少なくともただの過去の、鉄のカーテンの向こうの物語ではありません。

チェルノブイリの祈り』に書かれた世界を私たちはよく知っています。歴史的大事故であるにも関わらず問題が公に議論されず怪しげな論理がまかり通ることや、私たち自身が実際に起きた悲劇を率先して忘れ無効化しようとする愚かさ、そうした状況を作り出すマスメディア統制とプロパガンダはすでに身近なものとして存在しています。

まず、私たちは公平ないいくらしをし、わが国民は最高であり、あらゆるものの規範であるという信念があった。この信念がくずれさったため、梗塞をおこしたり自殺をした人が大勢います。レガソフ・科学アカデミー会員のように、心臓に弾丸を撃ち込んで。なぜなら、信念を失い、信念をもたないままでいるなら、もはや参加者ではない。共犯者なんですから。弁解の余地はありません。

マラト・フィリポビッチ・コハノフ ベラルーシ科学アカデミー核エネルギー研究所、元主任

チェルノブイリ原発から発せられた大量の放射線によって汚染された村々、狂う計器の中で働き、死あるいは取り返しのつかない障害を負った兵士たち(彼らの多くはアフガン帰りの戦争経験者でもあった)。故郷を失う人々。子供を持つことができなくなった夫婦。病んだ子供たち。

この災厄の物語は、ミクロな視点でみれば人間が誰もが晒されている不条理の悲劇について書かれたものでもあります。ただ、人災でもあるという側面を忘れてはいけません。未然に防げたかもしれない不条理なのです。

本の冒頭に紹介されているリュドミーラ・イグナチェンコの証言は特に胸を抉ります。消防士として最初にチェルノブイリ発電所に向かったワシーリイ・イグナチェンコの妻であった彼女は、被爆によって凄まじい姿に変わり果てていく夫を、彼が死に至るまでの14日間看病し続けます。

私たちは結婚したばかりでした。買い物に行くときも手をつないで歩きました。「愛しているわ」って私は彼にいう。でも、どんなに愛しているかまだわかっていませんでした。考えてみたこともなかった。

(中略)

彼は変わりはじめました。私は毎日ちがう夫に会ったのです。やけどが表面にでてきました。くちのなか、舌、ほほ。最初に小さな潰瘍ができ、それから大きくなった。粘膜が層になってはがれ落ち、白い薄い膜になって。顔の色、からだの色は、青色、赤色、灰色がかった褐色。でもこれはみんな私のもの。私の大好きな人。とてもことばではいえません。書けません。

私は彼を愛していた。でもどんなに愛しているかまだわかっていなかった。

(中略)

当直の看護婦にいう。「夫が死にそうなの」。彼女は答える。「じゃあ、あなたはどうなってほしいの? ご主人は一六〇〇レントゲンもあびているのよ。致死量が四〇〇レントゲンだっていうのに。あなたは原子炉のそばに座っているのよ」

ぜんぶ私のもの。私の大好きな人。

(中略)

病院での最後の二日間は、私が彼の手を持ちあげると骨がぐらぐら、ぶらぶらと揺れていた。骨とからだが離れたんです。肺や肝臓のかけらが口からでてきた。夫は、自分の内臓で窒息しそうになっていた。私は手に包帯をぐるぐる巻きつけ、彼のくちにつっこんでぜんぶかきだす。ああ、とてもことばではいえません。ぜんぶ私の愛した人、私の大好きな人。大きなサイズの靴がなかった。素足のまま棺に納められたんです。

(中略)

原発の職員はみな近くに住んでいます。一生原発で働いてきた人たち、いまでも交代要員として原発に通っています。ほとんどの人は恐ろしい病気や障害がありますが、原発をはなれられないのです。今日、どこでだれが彼らを必要とするでしょうか? たくさんの人があっけなく死んでいく。ベンチにすわったままたおれる。家をでて、バスを待ちながら、たおれる。彼らは死んで行きますが、だれも彼らの話を真剣に聞いてみようとしません。私たちが体験したことや、死については、人々は耳を傾けるのをいやがる。恐ろしいことについては。

でも……私があなたにお話ししたのは愛について。私がどんなに愛していたか、お話したんです。

不条理を前にしても、人間の尊厳や愛は確たる形で存在し輝きを失うことはないということをこのリュドミーラの言葉は教えてくれます。さればこそ人間の生に価値はあると。しかしながら、それすらも忘却の前には無力なのです。さらに言えば、これは起きなくても良かった悲劇なのです。本来ごくありふれた幸福な恋人たちが、愛する人が口から吐き出す臓物を掴んで取り出さなくてはならなくなる必要はないのです。

リュドミーラはこの時妊娠していました。一六〇〇レントゲンをあびた夫の看病についたことで、その子は死産となります。これは愛の物語ではありますが、まったく美談ではありません。塗炭の苦しみ、生きながら味わう地獄の物語です。

 

この二冊が持つテーマはあまりに多く、戦争、民族、政治、宗教、不条理、生、愛、平等、自由、ヒューマニズムの切り口からもリベラリズムの切り口からも、それぞれに異なる紋様を見てとることができます。

しかしそのすべてに共通しているものは、このふたつの災厄がもつ魂をも握りつぶす恐怖に他なりません。そして今生きている私たちは、まだ偶然にもこうした災厄に遭っていない幸運な人間であるということに過ぎません。彼我には何の違いもないのです。

我々にできることはそう多くありません。ただ、悪魔に鏡を見せてやることはできます。事実をありのままに知ること。悪魔の顔を正面から見つめ返し、私たちの瞳の中に悪魔の顔を映す。

目を逸らしてしまえば、すべては再び血と汚泥の中へと沈んでいくのです。それを防ぐためにも、どうかこの2冊がもっと多くの人に読まれますように。

 

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スローダイエットのススメ

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1年くらいダラダラとダイエットを続け、なんとか目標体重に達したので、その方法を簡単に書き残しておこうと思います。

ちなみにダイエットの内容は、標準体重(BMI22)から美容体重(BMI20)に落とすというもの。

ダイエットの基本 標準体重と美容体重。摂取カロリーの目安。摂取カロリー抑制型ダイエットって?|ウーマンジャパン

何のためにと言われても、自分で自分のシルエットに満足したいから以外の理由は一切ありません。昔は美容体重よりももっと痩せていたので、自己イメージがぐちゃぐちゃしてきたのをなんとかしたかったという感じでしょうか…。

上記のサイトで出ている数字を見ればわかるとおり、標準体重と美容体重の差は3~4kgです。ただ基本的に健康的で調和の取れた状態から削るので、意外と減らないし、何より健康を崩さないように気をつけなくてはならないのが大きな課題となりました。

 

で、何をしていたか。

 

(1)カロリー計算アプリを入れる

とにかく摂取カロリーを意識しなければダイエットは始まりません。

おすすめはこいつ。いや、この方。

www.noom.com

目標体重とどういうアプローチで痩せたいか(ゆるめかきつめか)を登録すると、毎日の目標カロリーを提示してくれます。

あとは3食食べたものを入力して、目標カロリーに対する数字のつじつまを合わせるだけ。

商品登録数が多いし、なんかむやみに励ましてくれるのでありがたい気分になります。人格的なアプローチをしてくるので、依存し始めるとだんだんコーチに言い訳をする独り言が増えたりします。ガッツリやりたい人は課金してその価値のあるアプリだと思いますが、長期にかけて健康を維持しながらゆるやかに痩せたいという感じであれば、無料の範囲で全然オッケーな使えるアプリです。

 

(2)休みの日に筋トレ+有酸素運動をする

 痩せるだけなら何も食べずに寝ているのが一番なので、運動必須というのは嘘だと思いますが、健康的に痩せるのであれば運動をしなくてはなりません。

あと何より、筋肉をつけておくと、リバウンドで体重が増えても戻しやすくなります。

でも毎日やると疲れてしんどいので、週に2日くらい+noomコーチに対して後ろめたさがぬぐいきれなかったときだけでいいです。

ガッツリやりすぎる必要はありません。

私の場合は、コロコロ(腹筋ローラー)とスクワットを交互にやるセットを、じょじょに身体を慣らして回数を増やしていきました。

XYSTUS(ジスタス) スリムトレーナーTR H-7218

XYSTUS(ジスタス) スリムトレーナーTR H-7218

 

コロコロは腹筋だけでなく上半身にまんべんなく効く器具なのですが、正しい態勢をキープしないと一発で腰をぶっ壊す神にも悪魔にもなれる系アイテムなので気をつけてください。

使う時は必ず自分のおへそを見る姿勢をキープすること。間違っても前を見てはいけません。

結構な負担なので、最初は説明書に書いてある、座ってやる「膝コロ」から始めて、だんだんステップアップしていってください。

腹筋ローラーのコツまとめ【初心者向け】 | ccore+|後藤健太公式ブログ

私は上記のサイトで言うと、2段階目の「壁コロ」で止まっています。ていうかこれ以上やれるようになるにはあと1年以上かかるね。

最初は「膝コロ」10回+スクワット20回を2セットとかそんなぬるいところから始めました。

今は「壁コロ」10回+スクワット30~40回を3セットです。腰や膝をイワさないよう、丁寧にやることが肝要なので、無理はしません。

疲労回復+筋肉痛防止のため、BCAA系が入ったスポーツ飲料を用意して飲みながらやるのがお勧めです。

また、100均のもので構わないので、肘・膝・手首のサポーターをつけるといいと思います。私の場合、家系的に代々膝がイカれているので必須でした。

 

何でもいいんですが、続きもののDVDなんかを流しながらやったりするとモチベーションになりそうですね。長編のドラマとかアニメとか。私は昔のプロレスのDVDを順番にレンタルしたりしていました。

腹筋がつくと、腰痛や肩こりがだいぶマシになりますので、デスクワークの人にこそお勧め。

 

(3)歩く

なるべく毎日歩きます。

私は通勤でどうしても往復40分歩く形になるのでさほど意識していませんでしたが、たまに1駅前で降りて徒歩時間を増やすなどしていました。

 

(4)ダイエットメニュー

クソ忙しいサラリーマンなので、毎日凝った料理を作るのは不可能です。

大体日曜日に、その週のお弁当に入れるものと、その週の夕飯にする野菜スープを作って、平日はごはんを炊くのみで暮らしていました。朝は毎日納豆ごはんとお味噌汁で、たまにバナナ1本だけだったり。ごはんはスーパーで売ってる炊くときにちょい足しするやつで五穀米にするのがお勧めです。

夕飯にする野菜スープは色々味を変えて飽きないように。

あと野菜だけだと不満足感がなくならないので、必ず肉を入れましょう。鶏胸肉が入っているだけで心が落ち着きます。

以下はレシピ一例。

満足感のあるトマトスープ
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  • ホールトマト缶 1つ
  • トマト 1つか2つ
  • キャベツ 1/4玉
  • にんじん 1本
  • しめじ 1パック
  • たまねぎ 中1個
  • セロリ 2本くらい(もっと多くてもよい)
  • ショルダーベーコン 適量(5cmくらい?)
  • 鶏胸肉 1枚
  • にんにく 1片
  • しょうが 好きなだけ
  • バター 適量
  • 白ワイン 100ml(料理酒でもよい)
  • コンソメ キューブだと2個分
  • 塩、こしょう 適量
  • タイム、バジル、オレガノ 適量
  • ローリエ 1~2枚
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  1. 鍋にバターを落とし軽く溶かした後、細かく刻んだにんにくを弱火で熱し、いい香りがしてきたらみじん切りにしたたまねぎとセロリ、しょうがを入れて、きつね色になるまで炒める
  2. キャベツとにんじん、トマトを入れて蓋をし、蒸す。嵩が半分くらいになり、水分が出てくるのを待つ
  3. ベーコンと鶏胸肉を別のフライパンで軽く炒める
  4. ベーコンと鶏胸肉を野菜の鍋に投入。さらにホールトマト缶としめじ、白ワイン、コンソメ、ローリエを追加
  5. 弱火で20分くらい煮る。適度に灰汁をすくう
  6. スープっぽい外見になったら、塩、こしょう、ハーブ類を適量入れてできあがり
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 水を使わないので、なんとなくもったりした感じの仕上がりになるため、妙に満足感があります。あまったご飯などをちょっとだけ煮て、リゾットを作っても美味しいです。

 ベーコンはダイエットとなると嫌われがちですが、このスープの甘みはベーコンにかかっているので、絶対に必要です。ちょっとでいいのです。出汁も出るので。

カロリー調整が必要なときは野菜スープのみ、とかでいいんですが、普段は五穀米を軽盛りくらいに添えていいと思います。あとは青物のサラダがあるとちょっと嬉しい。

おやつは基本的に無脂肪ヨーグルトかナッツ類少々です。合体させると満足感があります。

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(5)チートデイとか

たまにはnoomコーチにとんでもないカロリーを登録する日があってもいいと思います。でも、チート「デイ」にして3食チートすると戻すのが大変面倒。なので、チート「回」を1食入れるのがお勧めです。他の2食で調整が効くので、意識がゆるみすぎず、罪悪感も少なめで済みます。

あと女性であれば、生理中はチートというか一旦ダイエットのことは忘れて普通に食事してもいいと思います。

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私は生理中は料理するのもめんどくせーということで、外食デイにしていました。

 

(6)すぐ痩せたいとき

めっちゃ寝るといいと思います。15時間くらい寝ましょう。

 

……こんな感じですかね。要は生活習慣としてカロリーコントロールと運動を身につけていくだけという話なので、特に難しいことや辛いことはしていません。

女性で痩せないとか便秘だとか言う人は、観察していると水分を全然摂っていなかったりしてビビるので、意識して温かいお茶などを飲むといいと思います。

料理とかもうよくわかんねーという方は、食事の時にお味噌汁やスープなど温かい汁ものを一品つけると身体が活性化しますので、そこから始めましょう。

 

基本的に虚弱体質で、めちゃくちゃメンテに時間かけないとまともに動けない+お腹が減ると発狂して仕事にならない人間のダイエット報告でした。

何かの参考になれば幸いです。